トイレの鍵にまつわるお話
はじめに
生活圏に駅がなかったり、交通手段がバスや車の環境で育った人は、もしかしたら普通の電車にトイレが付いていることを知らないかもしれない。かくいう我もトイレがついてる普通の電車があるのを知ったのは大人になってからだ。
どうやら運行本数の少ない地方の路線や、乗車時間が長そうな路線についているようで、首都圏だと東海道線や常磐線などを利用しないと目にする機会がないかもしれません。
出会い
その日我は、いわきから常磐線に乗って東京に帰るところでした。いわきから東京までは、常磐線を乗り継いでだいたい4時間ほどかかるわけで、当然尿意なども発生します。ちなみに特急ひたちとかいう白い速いやつに乗れば2時間ほどで着きます。
基本的に短い距離を乗る在来線の場合、新幹線などとは違いそれほどトイレは混んでいません。まばらな車内でトイレの車両を目指し歩いた我は、トイレ入ってるよランプが消えていることを確認し、「開」ボタンを押したのです。
きれいなカーブを描きながら自動で開いた扉の向こう側には、だれでもトイレ並の広さと綺麗さを兼ね備えた個室、鈍く光るのステンレスの便器、そしてそれに腰掛ける下半身むき出しのおじさん。
見つめ合う二人。我もおじさんもどうして良いかわからず固まる。「これは千日手になる。」と瞬時に判断した我は、かろうじて動いた指先だけを使い「閉」ボタンをなんとか押したのでした。
見つめ合ったまま視界から消えてゆくおじさん。
尿意の引っ込んだ我は、出て来るであろうおじさんと目を合わせるのも気まずいので、そのまま他の車両に移ったのでした。
確かにあのトイレは中から鍵を締める方法が複数あって、しかも注意書きが多く混乱するかもしれない。行き過ぎたユニバーサルデザインも考えものだなと思った出来事でした。
まとめ
鍵閉めろや!